「ケロイド治療を受けたことがある方でなかなか良くならなかった」「余計にひどくなってしまった」「治療ができないと言われた」という方は、まずはお気軽にご相談ください。そして、絶対、あきらめないでください。
ケロイドに治療方法には、主に「保存的治療」と「手術・放射線治療」の二通りが代表的です。今回は、その治療方法について詳しく解説していきます。
目次
・保存的治療
保存的治療の中には、方法はいろいろありますが、組み合わせによって治療を行うことが効果的であるため、様々な方法を併用しケロイドの改善を図っていきます。
・内服療法
トラニラスト(リザベン)と柴苓湯の内服
トラニラスト(リザベン)
本来は抗アレルギー剤ですが、1日に300mg×6ヶ月内服することで赤みと痒みが軽減することが確認された為、広く一般にケロイドの症状改善目的にて処方されています。
単独でケロイドを治す力はないため、他の治療法と併用されます。
柴苓湯(サイレイトウ)
炎症をやわらげ、水分循環を良くする漢方で、体の免疫反応を調整し、炎症を和らげる働きをします。最近、トラニラストに匹敵する効果が認められました。 色白でむくみ易い体質の方によく効く漢方薬です。
・外用療法
副腎皮質ステロイド(ドレゾニンテープ)
腎臓の上にある副腎は、内分泌を生成する臓器です。重要なホルモンが分泌され、そのひとつが副腎皮質ホルモンのコルチゾールと呼ばれるものです。コルチゾールは身体にストレスが加わると分泌され、ストレスから身体を守る働きをします。それを合成した薬剤が副腎皮質ステロイドで、強力な抗炎症作用を持ち、各種病気に有効です。
ヘパリン類似物質(ヒルドイド)
血を固まりにくくする血液凝固抑制作用や、皮膚組織の血流量を増加させる(血行を良くする)作用、確執に水分を保持する作用などがあります。また、繊維芽細胞増殖抑制作用などの効果もあります。
・圧迫固定療法
患部の安静を保ち、圧迫することでケロイドを退縮させる治療法です。
ケロイドは皮膚が引っ張られたり、関節の近くなど動きが大きい場所では活動が活発になり大きくなる性質があります。シートやスポンジなどの貼付剤を貼付けることでケロイドにかかる刺激を少なくし、圧迫することで盛り上がる力を抑えることができます。
主に次の様な貼付剤が用いられています。ケロイドの部位や症状に応じて使い分ける工夫が必要ですので、専門医の指示に従って下さい。
フィクストン (ニチバン) |
7mm厚のスポンジに硬めのウレタンフォーム板が貼られている。 曲がりにくいので強い固定力と圧迫力がある。 |
エラストン (ニチバン) |
1cmの厚さのスポンジ。柔らかいので固定力は低い。 |
ピタシート (アルケア) |
接着面にハイドロコロイドを用い、皮膚にやさしい薄い透明な貼付剤。 ソフト・ハードの2種があり、圧迫力はないが、固定力に優れる。 目立ちにくいので顔などに適する。近年発売されたばかり。 |
バイオプラスト (アルケア) |
ハイドロコロイドに薄いウレタンフォームが貼付けられたシート状の貼付剤。 ピタシートより厚く、柔らかい。 |
サージカルテープ |
各社から数種類が発売されている。圧迫力はないが、固定する力は高い。 |
シリコンシート |
シリコンジェルのシート。洗うことで再利用可能。 汗でずれることも多く、長時間の貼付には向かない。圧迫力・固定力共にあまり強くない。 |
・副腎皮質ステロイド局所注入療法
ステロイド剤をケロイドに直接注射する治療法です。副腎皮質ステロイドをケロイド患部に直接注入することで、たんぱく質代謝に変化を及ぼし、繊維芽細胞の増殖を抑制し、治療効果を発揮します。
ケロイドの活動性を抑え、退縮させる効果があり、ケロイド自体の中に確実に注入することが効果を最大に引き出す重要なポイントです。しかし、この治療には、ちょっとした技術が必要です。当院ではまず、毎月1回の注射を3~5回続けて頂くようにしています。
5cm以下のケロイドではステロイドの注射を基本とし、他の保存的治療を組み合わせることで上手く症状を コントロールできている患者様も多くいらっしゃいます。
しかし、注射の疼痛と副腎皮質ステロイドの大量かつ長期連用は、副作用の発現性の可能性があるため、専門医にご相談下さい。
・手術+放射線治療
「真性ケロイド」の場合、手術単独ではほぼ100%再発しますので、術後の放射線治療は必須です。「肥厚性瘢痕(瘢痕ケロイド)」の場合ほとんどが手術単独で治療が可能で放射線治療は原則として不要です。
どちらの要素が強いのか、判別が困難なケースも少なくないので専門医に受診しましょう。
手術について
肥厚した部分を切除し、引きつれを取ることが手術の主な目的です。引きつれを取る為に形成外科ではZ形成術という方法を用います。小範囲の場合は局所麻酔下に通院で手術が可能です。広範囲で数の多い場合や小児の場合は全身麻酔下に行います。抜糸は概ね術後1週間目に行います。
術後の固定
ケロイドは手術後のきれいな状態がそのまま持続するわけではありません。傷は「赤み」がある間は変化する性質を持っています。そのため「術後の固定」は大変重要で、結果の半分を決めるといっても過言ではありません。
特に関節や顔など動きの激しい場所は厳重な術後固定が必要です。固定期間は概ね術後3ヶ月間です。
放射線治療
ケロイドの放射線治療は術後1週間以内に開始します。表面から約1cm程度の深さにのみ効果がある特殊な放射線で、内臓等深部の臓器にはほとんど影響がないものです。
現在、標準的には総線量20Gyを4~5回に分割して照射します。
※「真性ケロイド」の場合は手術・術後の固定に加え、この放射線治療が必須ですが、「肥厚性瘢痕(瘢痕)ケロイド」の場合は原則手術と術後の固定のみで、放射線治療は不要です。
・まとめ
ケロイドの治療は様々な方法を併用して改善を目指します。決して短期間で終わるような簡単な道のりではありませんが、一緒に向き合い、治していきましょう。
ぜひ一度、ジョイアクリニックにご相談ください。